プラモデルをエアブラシで塗装するためには、塗料だけでなく、塗料を希釈するうすめ液や、使用後の道具を洗浄するツールクリーナーも必要です。ところが昨今、模型店の売り場から、これらのシンナー類が一斉に姿を消しました。塗料があっても、それを希釈するうすめ液がなければ塗装できません。また、ツールクリーナーがなければ、エアブラシや筆に残った塗料を十分に洗浄できません。
そこで、これまで廃液として回収していた使用済みツールクリーナーを、もう一度洗浄に利用できないか調べてみました。
その過程で知ったのが、木工用の「との粉」を使用して、塗料の顔料などを沈殿させる方法です。今回は、使用済みツールクリーナーへ実際にとの粉を加え、4時間後、8時間後、24時間後の変化を観察しました。さらに、沈殿後に回収した液体をツールの洗浄へ使用し、どのような用途で再利用できるのかを確認します。
最初に断っておくと、この方法で使用済みツールクリーナーが新品へ戻るわけではありません。回収した液体は塗料の希釈や塗装には使用せず、ツールの一次洗浄用として再利用します。

ツール清掃用のツールクリーナー、うすめ液(シンナー)が店頭から消えた
プラモデルの塗装では、目的に応じて複数の溶剤を使い分けます。塗料を適切な濃度に調整するためには、塗料に対応したうすめ液が必要です。エアブラシや筆などに残った塗料を落とすためには、洗浄力の強いツールクリーナーやツールウォッシュを使用します。これらは広い意味でシンナーと呼ばれることもありますが、製品によって成分や洗浄力、想定されている用途が異なります。
ところが昨今、模型店の塗料売り場から、ツールクリーナー、ツールウォッシュ、うすめ液などのシンナー類が一斉に姿を消しました。いつも利用している店舗へ行っても棚は空いたままです。別の店舗を探しても同様で、必要な製品を必要なときに購入できない状態になりました。
GSIクレオスは2026年3月末、中東情勢の悪化によって、原油および石油化学系原材料の調達環境が急速に不安定になったとして、同年4月から当面の間、重点商品を中心とした生産体制へ移行すると発表しました。需要の高い製品についても月間の出荷数量を調整し、需要の少ない製品については生産間隔が開く可能性があるという内容です。
店頭で見られたすべての品切れが、この発表だけを原因とするものかは分かりません。しかし、模型用塗料や溶剤の供給が不安定になっていることを、実際の売り場でも感じる状況になりました。さらに同年6月には、うすめ液関連製品の価格改定も発表されています。
塗料が手元に残っていても、うすめ液がなければエアブラシ塗装は困難です。そして、ツールクリーナーがなければ、塗装後のエアブラシを適切に洗浄できません。洗浄が不十分な状態で放置すると、エアブラシ内部に残った塗料が固まり、ノズル詰まりや動作不良を起こす可能性があります。そのため、ツールクリーナーの使用を完全に止めることはできません。
これまでは、一度洗浄に使ったツールクリーナーを廃液として回収していました。しかし、次にいつ購入できるか分からない状況になると、一度使用しただけで廃液にしてしまうことが、急にもったいなく感じられます。新品の使用量を少しでも抑えるため、使用済みツールクリーナーを再利用する方法がないか調べてみることにしました。
再利用のため、「との粉」の利用を模索する
使用済みツールクリーナーを再利用する方法について調べたところ、「との粉」を加えて、塗料の顔料などを沈殿させる方法があることを知りました。
通常、エアブラシの洗浄に使った直後のツールクリーナーには、塗料の顔料や樹脂分などが混ざっています。そのまま静置しておくだけでも、比較的大きな固形物は少しずつ底へ沈みます。しかし、細かな顔料は液中に残りやすく、時間が経過しても色や濁りが残ることがあります。
そこへとの粉を加えると、との粉が底へ沈んでいく過程で、液体中に浮遊している顔料などの固形分も一緒に沈殿させられる可能性があります。沈殿後、上部に残った比較的澄んだ液体だけを回収できれば、ツールの一次洗浄へ再利用できるかもしれません。
例えば、最初に再利用したツールクリーナーで大まかな塗料汚れを落とし、最後に新品のツールクリーナーで仕上げ洗浄を行います。この使い分けができれば、洗浄状態を保ちながら、新品のツールクリーナーの使用量を抑えられます。ただし、調べた情報だけでは、実際にどの程度沈殿するのか、どのくらいの時間が必要なのか、回収後も洗浄力が残っているのかまでは判断できません。
そこで今回は、自分が実際に使用したツールクリーナーへとの粉を加え、時間の経過とともにどのような変化が起きるのかを試すことにしました。
そもそも「との粉」とは?
との粉とは、風化した岩石を加工して作られる非常に細かな粉末です。本来は、木材や木工作品の「目止め」に使用します。
木材の表面には、導管と呼ばれる小さな穴があります。との粉を水で練って木材へすり込むと、細かな粉末が導管に入り、表面の凹凸を埋めます。その結果、木材の表面が平らになり、後から塗るニスや塗料の吸い込みを抑えやすくなります。メーカーの説明によると、との粉は石を細かく砕いた粉で、それ自体に接着剤のような固まる力はありません。乾燥すると、再び粉状に戻ります。
今回注目したのは、との粉が非常に細かな鉱物質の粉末であり、液体中では時間の経過とともに沈んでいく性質です。使用済みツールクリーナーへとの粉を加えて静置すると、との粉自体が容器の底へ沈みます。その際、液中に浮遊している顔料などの固形分も一緒に沈殿する可能性があります。
ただし、これはツールクリーナーに含まれる不純物を化学的に分解したり、すべての成分を取り除いたりする「精製」ではありません。塗料には、顔料だけでなく樹脂や添加剤なども含まれています。これらのうち、溶剤中に溶けている成分まで、との粉ですべて取り除けるとは限りません。
また、との粉の本来の用途は木工品の目止めです。使用済みツールクリーナーの再生は、との粉メーカーが案内または保証している使用方法ではありません。
したがって、今回は次の条件で試します。
- 新品のツールクリーナーへ戻るとは考えない
- 塗料用うすめ液としては使用しない
- 塗装には使用しない
- 顔料などの固形分を沈殿させる目的で使用する
- 回収した液体はツールの一次洗浄に限定する
この前提で、実際にとの粉を試してみます。
との粉を試す

今回の目的は、使用済みツールクリーナーに混ざっている顔料などの固形分を沈殿させ、上部に残った液体を一次洗浄用として回収することです。
用意したものは次のとおりです。
使用する容器には、飲食物と間違えないように「使用済みツールクリーナー」「再利用・一次洗浄用」などと明記しておいた方が良いと思います。(私はしなかった…💦)
まずは使用済みシンナーの回収

普段のエアブラシ洗浄で排出したツールクリーナーを、専用の容器へ回収します。今回は、主に【使用した塗料の種類】を洗浄した後のツールクリーナーを使用しました。
異なる種類の溶剤や、水性塗料を洗った液体などを無計画に混ぜると、液体の性質や危険性を判断しにくくなります。そのため、できるだけ同じ系統の塗料と洗浄液に分けて回収したほうが管理しやすいでしょう。
回収した直後の液体は【色や濁りの状態】で、容器の向こう側がほとんど見えない状態でした。
今回は、この使用済みツールクリーナーを使って、との粉による沈殿を試します。
実際にとの粉を試す

まずは開封。袋に入った状態でした。若干固まっている節があったので、袋の上からもみ込んで形を崩しておきました。

万能ハサミでカット、まずは開いているビンに入れて、量を調整します。

使用済みツールクリーナーの量に対して、だいたい1/3~2/5に相当するとの粉を加えました。



との粉を加えた直後は、液体全体が一時的に強く濁ります。

容器のふたを確実に閉め、液体が漏れないことを確認してから、上下に10回程度振って混ぜました。

その後、火気や直射日光を避けた安定した場所へ置き、容器を動かさずに静置します。

残ったとの粉は、ジップロックで保管しておきます。
今回は、との粉を加えた直後、4時間後、8時間後、24時間後の状態を撮影しました。使用済みツールクリーナーに含まれる塗料の量や種類によって、適切なとの粉の量は変わると考えられます。との粉を多く入れれば、必ずきれいになるとは限らない様子です。
との粉と塗料が沈殿していく様子
ここからは、との粉を加えた使用済みツールクリーナーが、時間の経過によってどのように変化したのかを確認します。
変化を比較しやすくするため、同じ容器を、できるだけ同じ場所、同じ照明、同じ角度から撮影しました。
4時間後
との粉を加れてから4時間が経過しました。

容器の底には沈殿物が集まり始め、上部の液体と、下部の濁った部分との境目が少し分かるようになりました。

ただし、この時点では上澄みにも塗料の色が残っています。

まだ沈殿が十分に進んでいないと判断して、継続して観察を続けます。
8時間後

との粉を加れてから8時間が経過しました。
より鮮明に沈殿物のと境がわかるようになりました。

4時間後と比較すると、底に集まった沈殿物が厚くなり、上澄み部分が広がっています。
上部の液体は少しずつ透明度が増していますが、新品のツールクリーナーと比較すると、まだ色や濁りが残っています。このあたりが限界なのでしょうか・・。

さらに様子を見ます。
24時間後

との粉を加れてから24時間が経過しました。先ほどの8時間経過後と変わらないですね。この量だと、8時間もあれば分離するということでしょう。

黄色く濁っているように見えるのですが、粉の色なのかな?これは完全な透明にはならなかったです。

容器の底には、との粉と塗料の顔料が混ざったと思われる沈殿層ができました。
その上には比較的澄んだ液体が残り、との粉を加えた直後と比べると、上部と下部がはっきりと分かれています。
通常ならここで分離完了と判断して、スポイトで上澄み部分だけをを回収することになるのでしょう。が、少しめんどくさいですよね。容器を傾けて別の容器へ注ぐと、底の沈殿物まで一緒に流れ込む可能性もありますし・・。
そこで、このままの状態で使用できるのか試してみます。(次に使用したツールクリーナーを、この上に足して分離して・・と、引き続きこの状態のまま繰り返して使っていきたいと思います。

8時間で分離できることが分かったので、作業終了後に注ぎ足しておけば、次に使う際には分離できている計算です。

せっかく綺麗にしたクリーナーにまた混ぜるのは抵抗がありますが、スポイトを使って集めるのはちょっと敬遠したいので・・・。
⇒同じ状態で分離する事が出来ました。大丈夫みたいですね。運用していけそうです。
回収したツールクリーナーを再利用してみる
回収した上澄み液を、実際にツールの洗浄へ使用してみました。ちなみに、エアブラシでエヴォブラックを吹いたあとの洗浄に使用しました。
まず、エアブラシのカップなどに多くの塗料が残っている状態で再利用液を使い、大まかな汚れをうがいで落とします。その後、新品のツールクリーナーを使用して、ノズルやニードル周辺などを仕上げ洗浄します。実際に使用した結果については、少し粘度が上がっているのかな?という感じでしたが、仕上げ洗浄を除いて、問題なく使用できました。最初から最後まで新品のツールクリーナーだけを使用する場合に比べると、かなりの使用量を抑えることが出来ました。
一方、再利用液だけで洗浄を完了できるとは判断しませんでした。回収した液体には、目に見えない顔料や樹脂分、との粉の微粒子などが残っている可能性があります。そのため、再利用液が使えそうなのは、次のような場面です。
- エアブラシカップに残った塗料の一次洗浄
- 筆に残った塗料を最初に落とす洗浄
- 金属製の調色スティックの予備洗浄
- 塗料皿の予備洗浄
- 新品のツールクリーナーを使う前の下洗い
反対に、次の用途には使用しないことにしました。
- 塗料の希釈
- エアブラシ塗装
- サーフェイサーやクリアーへの混合
- メタリック塗料への混合
- 塗装直前の最終洗浄
- 新品のうすめ液やツールクリーナーへの継ぎ足し
再利用液を塗料の希釈に使用すると、色、光沢、乾燥状態、塗膜の強度などへ影響する可能性があります。また、との粉などの微粒子が残っていれば、エアブラシのノズル詰まりや、塗装面への異物混入にもつながります。したがって、回収したツールクリーナーは、あくまでも汚れを大まかに落とす一次洗浄用です。ノズルやニードル周辺など、塗料を確実に取り除きたい部分には、最後に新品のツールクリーナーを使用します。
との粉を使って再利用する際の注意点
ツールクリーナーやラッカー系うすめ液などの有機溶剤には引火性があります。また、その蒸気を吸い込むことによる健康への影響も考えられます。
との粉を加える作業でも、通常の塗装やツール洗浄と同様の安全対策が必要です。
- 火気のある場所で作業しない
- ストーブ、コンロ、たばこなどを近づけない
- 十分に換気できる場所で作業する
- 耐溶剤性の手袋や必要な保護具を使用する
- 容器や液体を加熱しない
- 溶剤に適さないプラスチック容器を使用しない
- 使用しないときは容器を確実に密閉する
- 直射日光や高温になる場所を避ける
- 子どもやペットが触れない場所に保管する
- 飲食物の容器を流用しない
- 容器に内容物と用途を明記する(同居人がいる場合など)
特に注意したいのが、容器の材質です。ツールクリーナーには強い溶解力があります。容器の材質によっては、変形、ひび割れ、溶解などが起きる可能性があります。使用するツールクリーナーの注意書きを確認し、溶剤に対応した容器を使用します。(私はビンを使用しました)
また、底に残った沈殿物には、との粉だけでなく、塗料や溶剤が含まれています。見た目が土や泥のようになっていても、通常の土や木粉と同じようには扱えません。排水口、河川、道路、地面などへ流してはいけません。
室内や火気の近くで、残った溶剤を意図的に蒸発させる方法も危険です。回収できなかった液体や沈殿物の処分方法については、居住地域の自治体の案内を確認する必要があります。
そして、今回の方法は、使用済みツールクリーナーを完全に精製するものではありません。見た目が透明に近づいたとしても、新品と同じ成分、性能、安全性に戻ったとは判断できません。との粉を加えた再利用液は、新品とは明確に区別し、一次洗浄以外には使用しないようにしています。
まとめ
今回は、使用済みツールクリーナーにとの粉を加え、塗料の顔料などを沈殿させて再利用できないか試しました。結果的に、一番大量に使用する一次洗浄で再利用する事が出来たので、大満足の結果となりました。
今回の実験では、との粉を加えて一定時間静置することで、容器の底に沈殿物が集まり、上部に残った比較的澄んだ液体を使用できました。ただし、この液体が新品のツールクリーナーへ戻ったわけではありません。目に見えない顔料、樹脂分、添加剤、との粉の微粒子などが残っている可能性があるため、塗料の希釈や塗装には使用できません。
一方で、エアブラシカップ、筆、塗料皿、金属製工具などの一次洗浄に使用し、最後に新品のツールクリーナーで仕上げれば、新品の使用量を抑えられる可能性が見えてきました。
今回の方法は、「使用済みツールクリーナーを新品へ戻す方法」ではありません。廃棄する前に、一次洗浄用としてもう一度利用できないか試す方法です。模型用のシンナー類が簡単に購入できない状況では、手元にあるツールクリーナーを節約するだけでなく、これまで廃液にしていたものを安全な範囲で再利用することにも意味があると思います。
ただし、結果は使用した塗料、ツールクリーナー、との粉の種類や量、静置時間によって変わる可能性があります。安全性を優先し、再利用液と新品を明確に区別したうえで、一次洗浄に用途を限定する必要があります。
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